アイドル声優の輪廻、もといキャリアパスに関する考察

昨年1年間の声優業界を振り返ってみると、最大のトピックは「平野綾の躍進」に他ならないんですが、もうひとつ衝撃的だったのが「椎名へきるの復活」でした。今どきのアニメファンは椎名へきるの存在を知らないんじゃないかという危惧すらありますが、アイドル時代(というか『ハミバ』か)を知る身としては、それから10年近い時を経て『ときめきメモリアルOnly Love』で女教師をやってるというのはかなりの衝撃でした。復帰早々、従来の椎名へきるではほとんどなかった「大人の女性」をやってるというのが驚きだったわけです*1

アイドル声優にとって、「大人の女性」を演じられるかどうかって大きな分かれ目じゃないかという気がしているのですよ。90年代半ばを席巻した女性声優たちが、近年になってヘタな主役級キャラよりも大人びた女性を演じることによって作品に対していい味を出してるという事実は脈々とあるような気がしてなりません。

今回の椎名へきると同種の衝撃って過去にもあって、三石琴乃の『ガンダムSEED』でラミアス(02年、当時35歳)とか、林原めぐみの『ラブひな』で浦島はるか(00年、当時33歳)とか、國府田マリ子の『デジモンセイバーズ』で大門小百合(06年、当時37歳)かな。久川綾の『極上生徒会』で蘭堂ちえり(05年、当時37歳)なんかもそうだったかも。*2

特にこの中で林原めぐみ國府田マリ子久川綾については母親役だっていうのが大きかったですね。しかもいずれも既婚だったり子持ちになったりしてるっていうのもありますが、役の端々にそういうオーラが出てるような気がしてまた感慨がありました。三石琴乃は『エヴァ』で大人の女性役が実質初挑戦で成功したというのがあると思うけど、それが時を経て円熟味を増したなぁというタイプの感慨だったでしょうか。*3

アニメキャラの年齢構造って比較的若い所に寄っている傾向があって、特に10代や20代が主要キャラっていうのが当たり前のようにしてあるけど、そういう中で一段も二段も上のキャラクターを演じられるっていうのはベテラン声優の特権なんじゃないかと思うことがよくあります。それを演じきったと感じられてこそ、脱アイドル声優というか、新たなステージに入れると感じられるんでしょう。
そんなわけで椎名へきるが「学園アニメで女教師をやってる」っていうのは、古い声優ファンにしてみると革命的な出来事なわけです*4。あまり昔の椎名へきるがやった中の、落ち着いた雰囲気のキャラと大差ないような気はしていますが。


ついでに個人的な興味としては、堀江由衣田村ゆかり川澄綾子*5辺りが本格的に母親役とか女教師役をやらないかなと思ってたりもします。どうもいまいち想像しがたいところがあるけど、ヒロインとは違った味わいがまたあるんじゃないかな。若手の台頭とかがある中で、そういう方向で新たなポジションを見出すっていうのも、ひとまず王道なのではないかなと思うわけです。

*1:良くも悪くも「椎名へきるキャラ」だという気はするけど

*2:年齢は放送年−生年で書いてるので多少の前後はあるかも

*3:井上喜久子も挙げようと思ったけど、17歳なので除外

*4:個人的にはこれで椎名へきるコナミのコネがまだ生きてるのがわかったので、往年のキャストで『ツインビー』復活を夢みてますが

*5:そういや3人とも未婚か