声優が歌う主題歌に思うこと

時間が空いてしまったけど、プチ前回の続き。

発売からだいぶ時間は経ってしまっていますが、林原めぐみの約3年ぶりの新曲「Meet again」を聞くと、この人はやっぱり希代の歌手声優なんだなという思いが強くなります。単に歌手というより歌手声優というカテゴライズがしっくり来てしまう、そんな存在感があります。
細かい話はオリコンに載ってる林原さんのインタビューを読んでいただいた方が早いですが、「10年目のリナ再発見」を自らの歌で表現できてしまうこの人ってやっぱりすごいんだなと思います。『スレイヤーズ』の関連楽曲において、彼女の歌う歌は一貫してリナの視点による人生観か、もしくは林原さん自身によるリナ像を歌い上げていたことを思い起こすと、彼女なりの声優根性を発揮していたんじゃないかなと思います。*1
個人的にはアニメ作品としての『スレイヤーズ』をほとんど評価していないので大した感情移入はないんですが、『セイバーマリオネットJ』に関してはOPの「Successful Mission」とEDの「I'll be there」でかなり涙した記憶があります。声優が歌うアニソンについてはこの頃の記憶が原体験として強く残ってるので、以後のアニメにおいて声優が主題歌・挿入歌を歌う場合もかくあるべきだという思いが強いのかもしれません。

ちょっと余談。たぶん影山ヒロノブさんだったと思うんですが、「アニソンってのは必殺技の名前とかを連呼しなきゃいけない」みたいなことを仰っていたことがあったように記憶しています。この指摘が全面的に正しいかどうかは疑問が残るところではありますが*2、アニメに限らずドラマや映画なんかでも主題歌はある程度その作品世界を表現する必要があるのではないかと思っています。そういうのを一切無視した売れ線のアーティストがアニメの主題歌を歌うと「何だかなぁ」と感じてしまうのはよくあることではありますが、それは今回の本題ではないので置いておきます。

誰が歌うにせよ「主題歌」とカテゴライズされる楽曲は作品世界を意識しなければならないというのを大前提として、アニメの主題歌を声優が歌う場合*3、そのキャラの心情を体現しやすいという特権的事情があります。むしろ「特権」というより「義務」に近い要素なんではないかと感じるわけです*4。出演してる声優が主題歌を歌ってるのに、作品の世界観となんら関係ない楽曲に仕上がってたりするとかなりげんなりしてしまいます。ましてや挿入歌やキャラクターソングにおいてそんなことになってたりすると、もはや無意味に歌だけ売りたいんじゃないかと感じざるを得ません。

前述の林原めぐみ関連は正しく成功した好例なわけですが、最近だと『ハルヒ』のOPとEDはそういった観点でも巧妙な楽曲作りがなされたのではないかと感じられました。『ネギま』や『いちごましまろ』なんかはあまりに主題歌がキャラクター主体になりすぎてて、またそれはそれでアリかなというところ。
栗林みな実の場合、『君が望む永遠』関連についてはこれでもかというくらい作品世界に真っ正面から向かい合っていますが、『舞HiME』関連になると微妙なところ、というかそもそも出番が少ないし。
個人的に楽曲単体としては非常に好きなんですが、アニソンとしての評価に悩んでるのが水樹奈々田村ゆかり堀江由衣です。いずれも主役か準主役級の作品で主題歌を歌うことがよくあるとは思いますが、どうも林原めぐみの時のようなキャラに対する向かい合い方を感じられずにいます。直近だと水樹奈々の「ETERNAL BLAZE」や田村ゆかりの「恋せよ女の子」や堀江由衣の「ヒカリ」にしろ、歌詞だけ見ると『なのは』なり『極上生徒会』なり『いぬかみっ』の世界観を追ってるように感じられるんですが、全体としては齟齬というか違和感を感じてしまいます。彼女たち本人が前面に出すぎてると言う方が正確でしょうか、もちろん彼女たちのせいというよりはプロデュースしている側の姿勢の問題なのかもしれませんが。

そろそろ林原めぐみを引き合いに出すのがどうかという気はしてきていますが、彼女の場合、歌とキャラクターに対する愛が尋常ではないのではないかと思います。彼女のスタイルそのものが一時期の役柄に合致しまくってたということと、そもそもの彼女自体のポテンシャルの高さを勘案すると、林原めぐみを基準にしてしまうのは他の人たちにとっては酷なのではないかとさえ思ってしまいます。
出所が曖昧ではありますが、林原めぐみ自身の言葉として「良い作品・良いキャラ・そして良い歌に巡り会えた」という意味のことを言っていたことがあるように記憶しています*5。結局のところ、こういう条件の合致によって声優が歌う良い主題歌を耳にすることができるのかなと思います。



ちょっと無関係な余談というか、ある意味でひどい結論。今期の主題歌で一番感動したのは『NHKにようこそ』の「踊る赤ちゃん人間」だったりします。いや、往年の筋肉少女帯の世界観を思い出したっていうのもあるんですが、それがありながら『NHK』らしい内容の歌詞で心にぐっと来てしまいましたよ。*6

*1:正確なディスコグラフィーを発掘し切れてないけど、自身で作詞をするようになった辺りからキャラに対する主観性より客観性が強くなったような気が

*2:そもそも必殺技とかないアニメもあるし

*3:ドラマの主題歌を主演女優が歌う場合も同様ではあるけど、そういや例が少ないな

*4:ただし前回のエントリーのような「例外」はあるとは思います

*5:たぶん『スレイヤーズ』絡みじゃないかと思う

*6:原作の滝本竜彦筋少好きらしいから当然なのかもしれないけど