涼宮ハルヒの憂鬱 第12話「ライブアライブ」

あちこちでライブシーンそのものに関する絶賛気味の考察と、平野綾の歌唱力を誉める内容は見かけたけど、ちょっと違う視線からこのシーンのすごいところを指摘。

過去、いろんなアニメにおいてライブシーンには泣きを見てきたわけですが、(言い方は悪いけど)よく見えた作品でも演出で誤魔化しているところがあるように思うわけです*1
で、今回の「ライブアライブ」におけて最も特筆すべきは、細かい動きが完璧であるということ。冒頭の有希のギターソロから思わず目が離せなくなってしまったんですが、左手が抑えてる位置や右手の動き方が音の鳴り方に忠実です。本業ギタリストじゃないので細かいことはよくわからないんですが、たぶん実際に演奏してるテクニックと同様の描写をしてるように見受けられました。
あとハルヒのギターも作中では「かついでるだけ」と言ってるけど、ボーカルがないところだと結構細かい技を駆使してて、それに伴う肩の動きや息づかいまでもがまた完璧。1曲目の歌い出し前のハルヒを横から見たカットなんかがわかりやすいかも。

ついでにもうひとつすごいところ。ヘッドホンで聴いてみるとよくわかるんですが、定位の取り方までちょっとこだわりを感じます。有希が思いっきり左に寄ってて、ベースとハルヒがちょっと右寄りなのかな。実際の画面上の配置だとアンプの位置で左から有希・ハルヒ・ドラム・ベースなんだけど、ミキシングの都合からベースを真ん中に持って来ざるをえないというのはともかくとして、有希を思いっきり左に寄せて、しかも2曲ともその定位からびくともしないところにこだわりを感じたりもしてしまいました。
あとハルヒのボーカルに対するリバーブが無駄にきついように聞こえたけど、あれはたぶん体育館ライブという状況を再現しようという試みなのかな*2。たしかにああいう体育館でライブをするとステージの左右についてるスピーカーから声を出さざるをえないので、無駄にリバーブがかかる傾向があります。
よーく聞き続けると、はっきり言って飽きてしまうミキシングですが、その辺も含めて学園祭のライブっぽさなのかもしれません。

こういった音楽的部分以外にもカメラワークの上手さとそこからわき上がるハルヒの表情など、評価すべきところは多いシーンではないかと思います。
過大評価かもしれませんが今後のアニメにおけるライブシーンの規範となるべきほどのデキですよ。なかなかここだけに労力を注げないだろうし、何よりこういうテクニックに詳しい作画師や音響スタッフがいないとできない技だし、一歩間違えれば「ライブシーンが長すぎ」という批判を浴びかねない。ただ少なくとも今回のこの「ライブアライブ」の一連のシーンについては、スタッフの労力にただ賞賛を贈るべきなのかなと思います。

それからひとつだけ疑問を。ドラムセットの配置がおかしいのは気のせいなのかな。何で正面のタムが無くて、フロアが2本なんでしょうか。音を聞く感じだとあえてフロアが2本である必然性を感じないんだが…。

さらに、蛇足ですが有希のSF的バックグラウンドやハルヒが天才的オールラウンダーということを考慮しても、高校生のレベルを超越してますよ。だからこそああいう盛り上がるライブができるんですけどね。
今回のエピソードについてハルヒらしくないという指摘はちらほら見かけますが、この超越の仕方が今までのハルヒにおける「変化球的な超越さ」ではなく、ありがちな青春学園ドラマみたいな「直球的な超越さ」から来る違和感なのではないかな。そういう意味では前島賢の指摘は非常に頷けるところがあって、確かに第1話で30分丸々放映した「朝比奈みくるの冒険」における微笑ましいほどのアマチュアイズムに比べると、今回のプロに近いデキには違和感があります。
原作における今回のエピソードの既読者からは別の指摘もあるみたいだけど、ここまでまだ読み進めてないので迂闊なツッコミは控えておこうかな。

*1:ちなみに一番良かったと思えたのは『BECK』、泣けたのは『快感フレーズ』かな

*2:実際には平野綾のコーラスを多重に被せてるだけのような気もする